ゆかりごはんの縁結び -読書記録-

とにかく面白い小説が読みたい…!

『かがみの孤城』辻村深月:孤独な学生たちの奮闘劇

 

かがみの孤城

著者 :辻村深月

出版社:ポプラ社

ページ:554

満足度:★★★★★★★★★★

 

今最も熱いと言っても過言ではない超人気作家、辻村深月による青春×ミステリ小説、『かがみの孤城』。本作は、2018年本屋大賞を受賞しており、アニメ映画化もしている辻村深月の代表作である。

しかし、僕は今の今まで今作を読んだことが無かった。というか、辻村深月作品に触れてこなかった。なんとなく自分に合わない作風だと勝手に思い込んでいたのだ。そのため、本作が初めて読んだ辻村深月作品となった。そして、僕は本作にドはまりした。翌日に大事な会議があったにも関わらず、僕は徹夜でかがみの中の世界にのめり込んだ。

これはブログに読書記録として残さねば失礼というもの…。というわけで、感想を以下につらつらと綴っていきたいと思う。もちろん、ネタバレは無しで。

 

以下、あらすじ

 

あなたを、助けたい。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

 

心理描写が半端じゃない

小説において最も重要な要素は、キャラクターに感情移入できるかどうかだと僕は思っている。どれだけストーリーが優れた小説であっても、作者の傀儡であるようなステレオタイプのキャラが登場すると、それだけで心が物語から離れてしまう。簡単に言うと、冷めてしまうのだ。そいつがどんな行動を取ろうと、ふーん、としか思わなくなってしまう。我ながら可愛くない人間である。

その点においては、本作は完璧である。むしろ、緻密に描きすぎているが故に、自分もいじめられて不登校になった学生だと錯覚してしまうほどだ。個人的な境遇もあるだろうが、ここまで主人公に感情移入できてしまう小説は、本作が初めてである。性別も違うのに。

本作の登場人物たちは孤独を抱えている学生たちであり、彼女たちの境遇を考えると無意識に応援してしまう。仲間意識が勝手に芽生えてしまう。これも、作者の筆力によるものだと思うと、本当にすごい作家だなぁと思わざるを得ない。

ふと疑問に思ったのだが、この作品をいじめっ子たちが読んだらどういう感想をもつのだろうか。登場人物たちに全く感情移入できないのだろうか。それとも、自分が過去に犯した罪を忘れ、泣ける作品だとか傑作だとかのたまうのだろうか。非常に気になるところである。

 

ちゃんとミステリ小説

何を隠そう、本作はミステリ小説でもある。あまり語るとネタバレになるので詳しくは書かないが、何でも願いが叶えられる鍵はどこにあるのか、そもそもかがみの城とはなんなのか、狼のお面を被った少女は誰なのかといったところまで全て回収される。しかも、ヒントはしっかりと読者にも提示されているため、アンフェアというわけでもない。本当に完成度の高い小説である。

そもそも、辻村深月先生は、かの傑作ミステリ小説『十角館の殺人』を読んで衝撃を受け、その作者である綾辻行人先生から「辻」という一文字を取って自分のペンネームに使用しているほどのミステリオタクである。ミステリとしての完成度もずば抜けているのも納得である。

 

 

本作は本当に素晴らしい作品だった。満足度も文句なしの★10個である。映画の方はまだ鑑賞できていないのだが、どうなんだろうか。小説としては傑作ではあったものの、映画として2時間でまとめ切るのは難しそうにも思えるのだが。とにかく、本作をまだ読んだことがないという方がもしいれば、すぐに読み始めることをお勧めする。