ゆかりごはんの縁結び -読書記録-

とにかく面白い小説が読みたい…!

2024年4月 1週目 読んだ本まとめ 『かがみの孤城』『方舟』『新釈 走れメロス』『雨の日のアイリス』

どうも、読書記録ノート代わりにブログを書いている、ゆかりごはんです。

 

この記事では、面白かった面白くなかったにかかわらず、とりあえず今週読了した小説を記録がてら軽くまとめようと思う。僕が今週読んだ小説は、以下の4作である。

 

かがみの孤城辻村深月

あなたを、助けたい。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

今週読んだ小説の中ではぶっちぎりのNo.1小説。面白すぎて夜中に一気読みしてしまい、翌日会社の会議に徹夜で挑む羽目になった。それぐらい世界観に没頭してしまう神小説である。

今作は、大きな孤独を抱えた7人の中学生たちが鏡の中の城に集められ、城の中に隠されたどんな願いも叶えられる鍵を見つけ出すミステリ要素と、仲間たちとの友情やいじめに対してどう対処していくかという青春要素が組み合わされた、非常に完成度の高い小説となっている。

とにかく心理描写が緻密で、登場人物全員に感情移入してしまうこと間違いなしである。皆の行動や思考にも説得力があり、実体を持ってキャラたちがそこに存在しているように感じられるのだ。

読者初心者にもおすすめできる傑作ではあるが、注意点が1つ。それは、結構いじめの描写がキツイことだ。軽い気持ちで読むと、人によっては心の傷が掘り起こされて苦しい気持ちになったり、気分が悪くなったりするかもしれない。それでも、最後は読んでよかったと思えること間違いなしなので、興味のある人は是非手に取ってほしいと思う。

 

 

『方舟』夕木春央

9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?

大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。

イムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。

ミステリ小説界の数々の賞を総ナメし、本格派ミステリでありながら2023年本屋大賞7位を受賞した非常に評価の高い今作。

多くの読書家を敵に回すかもしれないが、僕は「本格ミステリ小説」に苦手意識を持っている。登場人物たちが感情を抑制させられた駒のように思えてしまい、感情移入できないからだ。今作もその傾向はかなり強く、登場人物の関係性や心理描写はおまけ程度にしか存在しない。完全にミステリに魂を売っている作品である。

しかし、それでも今作は非常に楽しめた。舞台設定や物語の展開が秀逸で、一気読み不可避の徹夜本である。ミステリが苦手な僕でもこんなに楽しめたのだから、ミステリ愛好家の人たちは本作を読んで狂喜乱舞していたんじゃないか。何を語ってもネタバレになってしまうため、詳しいことは書けないのだが、とにかく面白さは保証しよう。人気になるのも納得の名作である。

 

 

『新釈 走れメロス森見登美彦

気高いまでの破廉恥。 ―近代文学を現代京都に転生させた名短編集―

芽野史郎は全力で京都を疾走した――無二の親友との約束を守「らない」ために! 表題作の他、近代文学の傑作四篇が、全く違う魅力をまとい現代京都で生まれ変わる! 滑稽の頂点をきわめた、歴史的短編集!

腐れ大学生を書かせたら右に出る物はいない森見登美彦による、古典作品の新釈短編集である今作。『山月記』『藪の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』を、森見ワールド全開で打ち直した短編を5作も楽しめる非常にお得感のある一冊となっている。特に、『新釈 走れメロス』と『新釈 桜の森の満開の下』が個人的に非常にお気に入りである。

『新釈 走れメロス』では、学園祭の大舞台で楽団の音楽に合わせて桃色ブリーフで踊るのを避けるため、親友を人質にして追手から逃げ惑うという、阿呆の極みのようなエンタメ全開のおバカ作品である。疲れた時に読めば、元気のもらえる一作であろう。

そんなバカげた話もあれば、かなり真面目でシリアスな話もあり、本当に完成度の高い小説となっている。森見登美彦初心者にもおすすめできる。興味があれば是非読んでみてほしい。

 

 

『雨の日のアイリス』松山剛

ここにロボットの残骸がある。『彼女』 の名は、アイリス。正式登録名称:アイリス・レイン・アンヴレラ。ロボット研究者・アンヴレラ博士の元にいた家政婦ロボットであった。主人から家族同然に愛され、不自由なく暮らしていたはずの彼女が、何故このような姿になってしまったのか。これは彼女の精神回路(マインド・サーキット)から取り出したデータを再構築した情報 ── 彼女が見、聴き、感じたことの……そして願っていたことの、全てである。 第17回電撃小説大賞4次選考作。心に響く機械仕掛けの物語を、あなたに。

友人からおススメされて読んだ本作。たかがラノベと侮るなかれ。非常に完成度が高く、ガチで泣ける名作だった。さすが僕の友である。僕の好みがわかっている。

序盤は、ロボット:アイリスと主人のアンヴレラ博士との幸せで微笑ましい日常をひたすら描いているのだが、中盤で博士が死んでからはそれはそれはもう壮絶である。アイリスも体が壊れてしまったため、醜い異形の体に改造され、音や視界は常に土砂降りの雨の中にいるようなノイズが混じり、ボコボコにされながらひたすら土木強制労働を課せられるようになる。序盤との落差が凄まじく、読んでいて本当に辛い気持ちになる。

そんな中アイリスは、超ブラック職場で出会った二人のロボット、リリスとボルコフたちと生きる意味について話し合うようになり、皆で脱走の計画を練り始める。その結果やいかに…。という物語である。

マジで泣いた。僕はロボットものに心底弱いのだ。薦めてくれた友人には本当に感謝している。ベタな展開に拒否反応を起こさず、とにかく泣いてみたいという人には今作を強くおススメする。