ゆかりごはんの縁結び -読書記録-

とにかく面白い小説が読みたい…!

2024年 7月 3週目 読書記録まとめ『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』『可燃物』

どうも、ゆかりごはんです。

今週の僕は、モンハンにはまってしまった上に、会社の行事も重なってしまった関係であまり読書の時間を確保できず、3作しか読むことが出来なかった…。まぁ、何冊読んだかよりも、作品を楽しめたかどうかの方が大事なことだとは思うけれども。

しかも、今週読んだ本は全て米澤穂信先生の作品である。米澤穂信ウィークと言っても過言ではない。しかも、全作とも超面白かった。やっぱこの人天才だわ。

 

愚者のエンドロール/米澤穂信

わたし、気になります」文化祭に出展するクラス制作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか? その方法は? だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した! さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ! <古典部>シリーズ第2弾!

評価:★★★★★★☆☆☆☆

脚本が失われたミステリ映画の前半だけを見て、殺人トリックと犯人を推測してシナリオを完成させる、一風変わったミステリ小説。「わたし、気になります」のセリフでおなじみ、〈古典部〉シリーズの2作目。

正直なことを言うと突っ込みどころは多々あったのだが、そんなことが気にならないレベルで伏線回収が見事で、非常に完成度の高い作品だった。特に、オチのブラック感というか、良い意味でのモヤモヤ感が僕好みで最高。前作『氷菓』より個人的に好き。

 

クドリャフカの順番/米澤穂信

待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲――。この事件を解決して古典部知名度を上げよう! 目指すは文集の完売だ!! 盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに……。大人気〈古典部〉シリーズ第3弾!

評価:★★★★★★★☆☆☆

文集の発注ミスで大量の在庫を抱えた古典部の奮闘劇と、並行して文化祭で発生した連続盗難事件の謎を追う青春ミステリ小説。『愚者のエンドロール』に続く、〈古典部〉シリーズ3作目。古典部員4人の視点から描かれる群像劇であり、それぞれのキャラの深堀もあって非常に楽しめた。特に里志の株が曝上がり。

個人的には、「わたし、気になります」の元凶、千反田えるに少しテコ入れが入り、自分の性格に問題があると自覚し努力していることが明示されたことにびっくりした。読者から苦情とか来たのだろうか。まぁ確かに、気になるだけ気になっておいて、謎解きは他人任せという自己中心的キャラではあるとは思うが、それはそれで良いキャラだと個人的には思うけれども。真相は謎である。わたし、気になります

 

可燃物/米澤穂信

米澤穂信、初の警察ミステリ!

二度のミステリーランキング3冠(『満願』『王とサーカス』)と、『黒牢城』では史上初のミステリーランキング4冠を達成した米澤穂信さんが、ついに警察を舞台にした本格ミステリに乗り出しました。

余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。
群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。

群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、そこには頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。その場所は崖の下で、しかも二人の回りの雪は踏み荒らされていず、凶器を処分することは不可能だった。犯人は何を使って“刺殺”したのか?(「崖の下」)

榛名山麓の〈きすげ回廊〉で右上腕が発見されたことを皮切りに明らかになったばらばら遺体遺棄事件。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。なぜ、犯人は死体を切り刻んだのか? (「命の恩」)

太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」)

連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。

評価:★★★★★★★★★☆

群馬県警を舞台とした連作短編ミステリ作品。主要ミステリ賞3冠受賞作。本作には、大掛かりなトリックや仰々しい演出は一切登場しない。ただひたすらに事件の謎と真摯に向き合う警察官の奮闘劇を描いた作品。

静かで坦々とした文章で紡がれる短編は、どれも重厚で骨太。現実的なトリックなのに、完全に意識の外からやられる感覚がたまらない。凄いなぁ、米澤穂信先生。ミステリ好きであれば、リアルタイムで謎解きに挑戦してみるのも面白いかもしれない。

 

今週は以上。また来週。

2024年 7月 2週目 読書記録まとめ『2』『死んだ山田と教室』『星の子』他3作

どうも、ゆかりごはんです。

一昨日、会社の同僚に薦められてモンハンライズを始めたのだが、これがなんとまぁ面白い!読書そっちのけで没頭してしまった…。久々にゲームにハマったなぁ、エルデンリング以来かも。ていうか、エルデンリングもDLC来てたような…。読書の時間が…。

何はともあれ、今週も読んだ本の感想をまとめようと思う。今週読んだのは以下の6作である。

 

2/野﨑まど

日本一の超劇団『パンドラ』の入団試験を乗り越えた青年・数多一人。しかし、夢見たその劇団は、ある一人の女性によって《壊滅》した。
 彼女は言った。
「映画に出ませんか?」と。
 言われるがまま数多は、彼女と二人きりでの創作をスタートする。
 彼女が創る映画とは。
 そして彼女が、その先に見出そうとするものとは……。
 『創作』の限界と「その先」に迫る野崎まど新装版シリーズ・最終章!!
 『2』が、全てを司る。

評価:★★★★★★★★★☆

野﨑アムリタシリーズ最終巻にして、"創作"の意義を突き詰めた、550ページ超えの長編小説。"感動"とは、"愛"とは、"進化"とは何か。これまで積み上げてきたものを惜しみなく出し切り、衝撃のラストまで駆け抜ける。

何を書いてもネタバレになるので詳細は書けないが、本シリーズの締めとしては最高の出来だったと思う。シリーズを通して良い読書体験が出来た。普段、シリーズものはあんまり読まないのだが、エンタメ度が高すぎて全作品ワクワクしながら読めた。野﨑まど先生、ありがとう

 

死んだ山田と教室/金子玲介

自分はなぜ生きているのか、自分はなぜ死なないのか、逡巡の中にいるすべての人へ。私がずっとデビューを待ち望んでいた新人の、ユーモアと青臭さと残酷さと優しさが詰め込まれた快作です。ーー金原ひとみ


夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。

評価:★★★★★★☆☆☆☆

交通事故で死んだ人気者:山田が、教室のスピーカーになって甦るという、トンデモ設定の連作短編小説。バカバカしくてつい笑ってしまう男子高校生の会話劇が内容の大半を占める。男子校の混沌とした雰囲気を上手く表現出来ていて、もの凄く面白い。

前半は楽しい雰囲気だったが、後半では少しずつ苦しい展開に…。後半部分は賛否両論あるかなぁという印象だが、個人的には好み。喜怒哀楽が全て詰まっている作品だった。読書初心者にもおススメ。

 

星の子/今村夏子

ちひろは中学3年生。病弱だった娘を救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込み、その信仰が家族の形をゆがめていく。野間文芸新人賞を受賞し本屋大賞にもノミネートされた、芥川賞作家のもうひとつの代表作。《巻末対談・小川洋子

評価:★★★★★☆☆☆☆☆

新興宗教にのめり込む両親と姉妹の日常を描いた作品。実写化もされている人気作。全体を通して坦々とした作風だが、テーマは激重で苦しい

正直言って読後感は最悪。読者の解釈に委ねられるラストではあるが、個人的には超絶大バッドエンドだと思う。救いがないよぉ…。ほんとにキツイ。ただ、一度は読む価値のある名作なのは間違いない。

 

アルメリアと虹の星/柊織之助

amazonランキング一位(無料読み物部門)を獲った作家が送る、子どもも大人も楽しめる感動ファンタジー・アドベンチャー

宇宙中の生き物たちが癒しを求めてやってくるホテルの星、エルムレス。気弱で内気なアルメリアは、自分を変えるべくエルムレスにやってくる。だが喜びと様々なホテルで溢れる街には、とある危機が訪れていた。彼女は明らかになっていくエルムレスの闇に立ち向かい、自分を変えられるのか……?

評価:★★★★★★☆☆☆☆

宇宙一のホテルを建てるためホテル星エルムレスに訪れた内気な主人公が、星の危機を救うために奮闘する成長物語。物語としては王道で、とにかく情景や心理描写が丁寧で繊細。かなり変わった世界観なのに、目の前に情景が浮かび上がってくる。

エルムレスに向かう電車のシーンが1番のお気に入り。ギャグあり、事件あり、感動あり、子供にも安心して読ませられる優しい作品だった。優しさと勇気を求めている人におススメ。

 

アルプス席の母/早見和真

まったく新しい高校野球小説が、開幕する。

秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?
補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。主人公は選手から母親に変わっても、描かれるのは生きることの屈託と大いなる人生賛歌! かつて誰も読んだことのない著者渾身の高校野球小説が開幕する。

評価:★★★★☆☆☆☆☆☆

甲子園を目指す球児と母親の成長物語。野球少年を息子に持つシングルマザーの苦悩と葛藤を描いた作品。大人同士のギスギス感が少し嫌だったが、終盤が激熱なのでそれで良い。やっぱりスポーツものは熱くて良いねぇ!

子供、特にスポーツ男児を育てているお母様方に凄く刺さる作品だと思う。評価が高いのも納得の作品。個人的にはもう少し物語の山があっても良かったかなぁと思ってしまったため、評価は少し辛目。

 

十三番目の人格 ISOLA/貴志祐介

賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格〈ISOLA〉の出現に、彼女は身も凍る思いがした。

評価:★★★★★★★☆☆☆

12年振りくらいに再読。人の感情を読み取れる主人公が、多重人格者の少女と出会う所から始まるホラー小説。僕にとってのエンタメの神:貴志祐介大先生のデビュー作。デビュー作にしてこのクオリティは流石。一生ついていきます。

中1で読んだ時は超怖くて寝れなくなったものだが、大人になった今読むと結構ギャグ展開もあって普通に笑える。後半の謎のスピード感、なんだか癖になる。ただ、ちゃんと怖いので苦手な方は注意。

 

以上。また来週。

2024年 7月 1週目 読書記録まとめ『ぼぎわんが、来る』『テスカトリポカ』『死なない生徒殺人事件』他3作

どうも、ゆかりごはんです。

今週も、読んだ本の感想をまとめていこうと思う。今週は野﨑まど作品を中心に読了した。いやぁ、面白いねぇ、野﨑まど作品。

 

ぼぎわんか、来る/澤村伊智

幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。正体不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのだろうか? 愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん"の魔の手から、逃れることはできるのか……。怪談・都市伝説・民俗学――さまざまな要素を孕んだ空前絶後のノンストップ・ホラー!!

最終選考委員のみならず、予備選考委員もふくむすべての選考員が賞賛した第22回日本ホラー小説大賞〈大賞〉受賞作。

評価:★★★★★★★★★★
正体不明の化け物"ぼぎわん"に襲われる家族を描いた、超絶最恐ホラー小説。第22回日本ホラー小説大賞受賞作。実写映画『来る』は視聴済みの状態で読んだ。いやぁ、面白かったなぁ(笑)個人的には小説の方が圧倒的に好み。
前半では"ぼぎわん"の恐怖に叩きのめされ、後半では激熱能力バトルに興奮しっぱなし。ホラーをエンタメに昇華させた脳汁出まくりの超絶傑作。選考員が絶賛したのも納得。素晴らしい。
 

テスカトリポカ/佐藤究

第165回直木賞受賞!

心臓を鷲掴みにされ、魂ごと持っていかれる究極のクライムノベル!

メキシコで麻薬密売組織の抗争があり、組織を牛耳るカサソラ四兄弟のうち三人は殺された。生き残った三男のバルミロは、追手から逃れて海を渡りインドネシアジャカルタに潜伏、その地の裏社会で麻薬により身を持ち崩した日本人医師・末永と出会う。バルミロと末永は日本に渡り、川崎でならず者たちを集めて「心臓密売」ビジネスを立ち上げる。一方、麻薬組織から逃れて日本にやってきたメキシコ人の母と日本人の父の間に生まれた少年コシモは公的な教育をほとんど受けないまま育ち、重大事件を起こして少年院へと送られる。やがて、アステカの神々に導かれるように、バルミロとコシモは邂逅する。

評価:★★★★★★☆☆☆☆

古代メキシコ文明×麻薬×臓器売買をテーマとした群像バイオレンス小説。直木賞&山本周五郎賞W受賞作。テーマの重さは噂に聞いていたが、正直舐めていた。ここまで読んでいて疲れる作品だったとは…。読了するのに3日かかってしまった。

心臓を捧げる文明に臓器売買の要素を絡めるという発想自体がヤバすぎる。胸糞/暴力描写が凄まじく、とにかく高カロリー。前半は正直退屈な部分もあったが、後半からの巻き返しが素晴らしい。骨太なクライム小説を読みたい人におススメ

 

死なない生徒殺人事件/野﨑まど

「この学校には、永遠の命を持つ生徒がいる」
 女子校「私立藤凰学院」に勤めることとなった、生物教師・伊藤は、同僚の教師や、教え子からそんな噂を聞く。人として、生き物としてありえない荒唐無稽な話。だがある日、伊藤はその「死なない生徒」に話しかけられた。
 “自称不死”の少女・識別組子。だが、彼女はほどなく何者かによって殺害され、遺体となって発見される――!
 “生命”と“教育”の限界に迫る鬼才・野崎まど新装版シリーズ第3弾!

評価:★★★★★★★★☆☆

自称"不死"の少女が首のない遺体となって発見された殺人事件から始まる、傑作ミステリ×SF作品。アムリタシリーズ3作目。あらすじの時点でもう既に面白いのに、内容はそのハードルを軽々と越えてくる

"生命"と"教育"の限界をテーマとした作品で、野﨑まど特有のぶっ飛び理論は健在。"教育"をこんな化け物設定に絡めるとかどういう発想だよって感じ。終わり方もめちゃくちゃ良かった。最後まで話がどう転ぶか分からない、野﨑ワールド大爆発の一冊。最高。

 

小説家の作り方/野﨑まど

”この世で一番面白い小説”。その一つの答えが、ここにある。

駆け出しの小説家・物実の元に舞い込んだ初めてのファンレター。そこには、ある興味深い言葉が記されていた。「この世で一番面白い小説」。あまねく作家が目指し、手の届かないその作品のアイディアを、手紙の主は思いついたというのだ。
送り主の名は、紫と名乗る女性。物実は彼女に乞われるがまま、小説の書き方を教えていくのだが――。
鬼才・野崎まど新装版シリーズ第4弾。「小説家を育てる小説家」が遭遇する非日常を描く、ノベル・ミステリー。

評価:★★★★★★☆☆☆☆

"この世で一番面白い小説"のアイデアを思い付いた女性に、小説の書き方を教えるミステリSF作品。野﨑アムリタシリーズ4作目。野﨑作品はネタバレ厳禁なので紹介文に悩むのだが、本作は特に難しい。

"この世で一番面白い小説"とは何なのか。アイデアを思い付いたという女性は一体何者なのか。僕も死ぬ直前でいいから、"この世で一番面白い小説"を読んでみたいなぁ

 

パーフェクトフレンド/野﨑まど

「友達とはなんですか?」少女達の不思議な友情物語。

みんなよりちょっとだけ頭がよい小学四年生少女・理桜は、担任の先生のお願いで、不登校の少女・さなかの家を訪れる。
しかしさなかは既に大学院を卒業し、数学者の肩書きを持つ超・天才少女! 手玉に取られくやしい理桜は、マウントを取るべく不用意に叫ぶ。
「あんた、友達居ないでしょ!」
かくして変な天才少女に振り回される『友達探求』の日々が始まるのだった……。
野崎まど新装版シリーズ、「友情」の極意をお届けする第5弾!

評価:★★★★★★★☆☆☆

超天才小学生が、"友達"の定義を探求するコメディ作品。アムリタシリーズ5作目。本シリーズの中では最もラノベに近い作風である一冊。表紙がめちゃくちゃ可愛くて僕好み。

小学生たちの会話が妙にツボに入り、ニヤニヤしながら楽しく読めた。友達を理論的に解明しようと奮起する主人公、めちゃくちゃ好き。 次巻の『2』でアムリタシリーズは最後。超楽しみだ。

 

家族解散まで千キロメートル/浅倉秋成

〈家族の嘘〉が暴かれる時、本当の人生が始まる。どんでん返し家族ミステリ

実家に暮らす29歳の喜佐周(きさ・めぐる)。古びた実家を取り壊して、両親は住みやすいマンションへ転居、姉は結婚し、周は独立することに。引っ越し3日前、いつも通りいない父を除いた家族全員で片づけをしていたところ、不審な箱が見つかる。中にはニュースで流れた【青森の神社から盗まれたご神体】にそっくりのものが。「いっつも親父のせいでこういう馬鹿なことが起こるんだ!」理由は不明だが、父が神社から持ってきてしまったらしい。返却して許しを請うため、ご神体を車に乗せて青森へ出発する一同。しかし道中、周はいくつかの違和感に気づく。なぜ父はご神体など持ち帰ったのか。そもそも父は本当に犯人なのか――?

評価:★★★☆☆☆☆☆☆☆

いつの間にか家の倉庫にあったご神体を神社に返却するため、犯人捜しをしながら山梨から青森まで家族でドライブするミステリ作品。最近ファンになった浅倉秋成先生の最新作。ただ、ちょっとハードルを上げすぎたかなぁって感じ。

伏線の魔術師である浅倉秋成先生の作品だけあって、オチまでの過程は最高に面白かったのだが、肝心のオチがなんか説教臭くてイマイチだった。多様性が叫ばれている今の時代、「家族」の定義って人それぞれだよなぁ。家族を大事にしよう。

 

今週は以上。また来週。

 

2024年 6月 4週目 読書記録まとめ『GOTH』『火のないところに煙は』『黒い家』他3作

どうも、ゆかりごはんです。

今週も読んだ本の感想をまとめていこうと思う。

 

GOTH/乙一

森野が拾ってきたのは、連続殺人鬼の日記だった。学校の図書館で僕らは、次の土曜日の午後、まだ発見されていない被害者の死体を見物にいくことを決めた…。話題騒然の若き天才乙一による初の単行本。〈受賞情報〉本格ミステリ大賞小説部門(第3回)

評価:★★★★★★★★★☆

謎の行動力を見せるサイコパスな主人公と、猟奇的事件の犯人たちとの心理戦を描いた連作短編集。第3回本格ミステリ大賞受賞作。 短編の完成度は極上であり、どんでん返し/叙述トリック/伏線回収、何でもござれ。

本作は、乙一が全力で読者を騙すためにあの手この手のテクニックを使って書き上げた傑作である。異常者vs異常者。作者vs読者。さぁ、君も一緒に乙一の掌の上で踊ろうじゃないか。

 

火のないところに煙は/芦沢央

本年度ミステリ・ランキングの大本命! この面白さ、《決して疑ってはいけない》……。「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」。突然の依頼に、かつての凄惨な体験が作家の脳裏に浮かぶ。解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。作家は、事件を小説にすることで解決を目論むが――。驚愕の展開とどんでん返しの波状攻撃、そして導かれる最恐の真実。読み始めたら引き返せない、戦慄の暗黒ミステリ!

評価:★★★★★★★★☆☆

作家である主人公が、人から聞いた怪談話をまとめていくフェイクドキュメンタリー傑作短編集。リアルでじめじめとした恐怖で満ちており、読んでいる最中はとにかく鳥肌が止まらない

ホラーだけでなくミステリ要素もあり、全ての伏線を回収する最終話は見事。よくもまぁ、これだけ綺麗にまとめたものだ。暑くなってきた今の時期だからこそ読んでほしい、超絶おススメ作品。

 

黒い家/貴志祐介

顧客の家に呼ばれ、子供の首吊り死体の発見者になってしまった保険会社社員・若槻は、顧客の不審な態度から独自の調査を始める。それが悪夢の始まりだった。第4回日本ホラー小説大賞受賞。

評価:★★★★★★★★☆☆

再読。伝説級に恐ろしい超絶傑作ホラー小説。最も怖い小説として選出されることも多いため、名前だけは知っているという人も多いのではないだろうか。本作の特徴としては、幽霊も化け物も宇宙人も一切出てこない。登場するのは人間だけ。ただし、その人間が激烈にヤバい

貴志祐介お得意の鬼ごっこパートは超鳥肌モノ。臨場感が凄まじく、心臓のバクバクが止まらなくなる。これも全て、貴志祐介の圧倒的な筆力によるものである。やっぱり貴志祐介は最高だ

 

推し、燃ゆ/宇佐美りん

【第164回芥川賞受賞作】

「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」

朝日、読売、毎日、共同通信週刊文春
ダ・ヴィンチ「プラチナ本」他、各紙誌激賞! !

三島由紀夫賞最年少受賞の21歳、第二作にして
第164回芥川賞受賞作

◎未来の考古学者に見つけてほしい
時代を見事に活写した傑作
――朝井リョウ

◎うわべでも理屈でもない命のようなものが、
言葉として表現されている力量に圧倒された
――島本理生

◎すごかった。ほんとに。
――高橋源一郎

◎一番新しくて古典的な、青春の物語
――尾崎真理子

ドストエフスキーが20代半ばで書いた
初期作品のハチャメチャさとも重なり合う。
――亀山郁夫

◎今を生きるすべての人にとって歪(いびつ)で、でも切実な自尊心の保ち方、を描いた物語
――町田康

◎すべての推す人たちにとっての救いの書であると同時に、絶望の書でもある本作を、わたしは強く強く推す。
――豊崎由美

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。デビュー作『かか』は第56回文藝賞及び第33回三島賞を受賞(三島賞は史上最年少受賞)。21歳、圧巻の第二作。

評価:★★★★★★☆☆☆☆

ある日、「推し」が女性を殴って大炎上。「推し」を推すことに全てを捧げて生きてきた女子高生の、絶望と再生の物語。第164回芥川賞受賞作。

どれだけ苦しくても、生きる意味を見失っても、生きていかなくちゃいけない。ラストの描写も賛否両論あるとは思うのだが、僕的には大満足である。凄く切ないのに、読んだ後は少し前向きになれる名作だ

 

舞面真面とお面の女/野﨑まど

野崎まど作品新装版・第二弾!財閥の遺産とその正体をめぐる伝記ミステリ!

第二次大戦以前、一代で巨万の富を築いた男・舞面彼面。戦後の財閥解体により、その富は露と消えたかに見えたが、彼はある遺言を残していた。
“箱を解き 石を解き 面を解け よきものが待っている――”
時を経て、叔父からその「遺言」の解読を依頼された彼面の曾孫に当たる青年・舞面真面。手がかりを求め、調査を始めた彼の前に、不意に謎の「面」をつけた少女が現われて――?
鬼才・野崎まど第2作となる伝記ミステリ、新装版!

評価:★★★★★☆☆☆☆☆

巨額の富を得た男が遺した遺言の謎を解く、伝記ミステリ小説。アムリタシリーズ2作目であり、本作でも野﨑ワールドが爆発している。前作である『映アムリタ』には及ばないまでも、個性的なキャラ達が織り成すドタバタ感と、シリアスに進むメインストーリーの塩梅が見事。最高に面白かった。とにかく、続きを読んでいこうと思う。

 

プシュケの涙/柴村仁

夏休み、補習中の教室の窓の外を女子生徒が落下していった。自殺として少女の死がひそかに葬られようとしていたとき、目撃者の男子に真相を問い詰めたのは少女と同じ美術部の由良だった。絵を描きかけのまま死ぬはずがない。平凡な高校生たちの日常が非日常に変わる瞬間を鮮烈に描いた、青春ミステリーの傑作。


夏休み、補習中の教室の外を女子生徒が落下していった。上の四階からの飛び降り自殺として少女・吉野の死が静かに葬り去られようとしていたとき、目撃者の男子・榎戸川と旭に真相を問い詰めたのは少女と同じ美術部の男子・由良彼方だった。登校拒否で授業に出ていなかった吉野は、ひそかに美術部に蝶の絵を描きに来ていたのだ。絵を描きかけのままで死ぬはずがない……やはり二人は彼女の死の真相を知っていた。彼女は自殺ではなかったのだ。少女が迎えた悲劇は自殺より更に残酷で無情だった。平凡な高校生たちの日常が非日常に変わり人間模様が陰影を織りなす瞬間を、デリケートな筆致で綴る青春ミステリ-。

評価:★★★★☆☆☆☆☆☆

書きかけの絵を残した状態で飛び降りた少女の死の真相を探る、青春ミステリ小説。前半は事件の真相を暴くパート、後半は飛び降りる日までの少女の学校生活を描写するパートに別れている。

正直、事件の真相は予想通りという感じではあるのだが、本作の見所は後半パートの方だ。少女を取り巻く環境は辛く寂しいものであり、それでも生きようとする少女の強さに感動した。文章もかなり読みやすいため、読書初心者でも楽しめると思う。

 

今週は以上。また来週。

2024年 6月 3週目 読書記録『六人の嘘つきな大学生』『ひゃっか!』『最後にして最初のアイドル』『魔女と夜の虹』他4作

どうも、ゆかりごはんです。

今週も、読んだ本の感想をまとめていきたいと思う。今週は個人的に当たりの作品が多く、非常に充実した一週間だった。

 

六人の噓つきな大学生/浅倉秋成

「犯人」が死んだ時、すべての動機が明かされる――新世代の青春ミステリ!

<<2022年本屋大賞ノミネート & ブランチBOOK大賞2021受賞 >>

■■各種ミステリランキングで話題沸騰中■■

『このミステリーがすごい! 2022年版』(宝島社)国内編 8位
週刊文春ミステリーベスト 10(週刊文春 2021年 12月 9日号)国内部門 6位
「ミステリが読みたい! 2022年版」(ハヤカワミステリマガジン 2022年 1月号)国内篇 8位
『2022本格ミステリ・ベスト10』(原書房)国内ランキング 4位


成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。

評価:★★★★★★★★★☆

人間の多面性と就活の闇を包括した、一風変わったミステリ小説。僕は気づいた。浅倉秋成の作品、大好きだ。以前紹介した『俺ではない炎上』もそうだったのだが、とにかくエンタメ密度が高すぎる。物語への没入感が凄まじく、ページを捲る手が止まらなくなる。

多面的な人間を一面だけで判断してしまう人間の愚かさを逆手に取った展開の連続に、僕の脳は興奮しまくり。そこら中に散りばめられた伏線の回収方法も最高。これは凄い作品だ。人気が出るのも納得の超絶傑作。超おススメです。

 

ひゃっか!

「全国高校生花いけバトル」。即興で花をいける、5分の勝負。
二人一組でエントリー。花をいける所作も審査対象。──高校二年生の大塚春乃はこの大会に惹かれ、出場を目指していた。
だが生け花は高校生にとって敷居が高く、パートナーが見つからない。
そんな春乃の前に現れた転校生・山城貴音。大衆演劇の役者だという彼は、生け花の素養もあると聞き……。
高校生たちの花にかける純粋な思いが煌めく、極上の青春小説。

評価:★★★★★★★★★☆

直木賞受賞作家が描く、「生け花」を題材とした青春物語。「全国高校生花いけバトル」に青春を懸ける男女コンビの生き様が描かれる。「生け花」に関する知識はほとんどない状態で読んだのだが、めちゃくちゃ面白かった。最高。

とにかく花の描写が丁寧で美しく、文章から美麗な生け花作品が次々と飛び出してくる。さすがは、直木賞作家である。さらに、青春物語としても至高の完成度を誇る。日本一を目指す男女コンビの熱意と成長と愛情に心が震える極上のエンタメ小説。超おススメです。

 

最後にして最初のアイドル/草野原々

“バイバイ、地球――ここでアイドル活動できて楽しかったよ。"

第4回ハヤカワSFコンテスト特別賞
第48回星雲賞(日本短編部門)
第27回暗黒星雲賞(ゲスト部門)
第16回センス・オブ・ジェンダー賞(未来にはばたけアイドル賞)

SFコンテスト史上初の特別賞&「神狩り」以来42年ぶりにデビュー作で星雲賞を受賞し、SF史に伝説を刻んだ実存主義ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFの表題作をはじめ、ガチャが得意なフレンズたちが宇宙創世の真理へ驀進する「エヴォリューションがーるず」、異能の声優たちが銀河を大暴れする書き下ろし声優スペースオペラ「暗黒声優」の3篇を収録する、驚天動地の草野原々1st作品集!

評価:★★★★★★★★★☆

表紙詐欺も甚だしい、超グロ百合ハードSF小説。正直に言うと、論理展開はぶっ飛んでおり、超展開の連続である。「どうしてこうなった…」という言葉が100回くらい脳裏に浮かんだ。バカと天才は紙一重とは、まさに本作の筆者のような人のために作られた言葉なのだろう。

どの話もスケールは宇宙を超え時空を超え、大風呂敷を広げに広げる。それなのに、最終的には綺麗に丸く収まり、爽快感すら感じる。ナニコレ。こんな本初めて読んだ。最高である。尖りに尖っている作風なため、間違いなく人は選ぶ作品ではあるが、僕みたいなエンタメを追い求めている読書中毒者にとっては至極の一冊。この本でしか味わえない何かが間違いなくある

 

魔女と夜の虹/柊織之助

ある日、虹色の髪をもつ少女ナナは、先生と呼んで慕う魔女との別れを迎えていた。先生は、街の外の世界で、人の役に立つために旅に出るという。ナナは手紙を交わす約束をして別れを告げる。それから数年後、ナナは八歳の誕生日を迎える。だが先生からの手紙は長い間途絶えていた。街では年に一度の花まつりの準備をしていて、開催するにはあと少し太陽の光が必要だった。あと少しで街中に植えた花が咲くという時に、街から太陽が消えてしまう。同時に、もう誰もいなくなったはずの先生の家に明かりがつく。魔女の仕業だと考える街の人たち、連絡が取れなくなった先生、いったいナナはどう向き合うのか...。それぞれの“やさしさ”の物語。

評価:★★★★★★★☆☆☆

街から太陽を消してしまった魔女と、彼女を先生と慕っている少女が紡ぐ、"やさしさ"を巡る短編物語。心に直接響く真っ直ぐな言葉が多く、読んでいてハッとさせられる瞬間が多々あった。まさに、大人も楽しめる児童文学という感じ。

優しすぎる人は、他人の幸せのために自分の幸せを犠牲にする。それは本当に正しいことなのだろうか。真の優しさとは何かを考えさせてくれる名作。ちなみに、本作はアマゾンで無料で読めてしまう。嘘だろ。正直、読まないと損レベルの作品なので、この記事を読んでくださった皆様は、今すぐに本作をダウンロードするのだ。おススメ。

 

この素晴らしき世界/東野幸治

◆◆◆◆◆

白い悪魔」「日本一心のない司会者」

東野幸治

いじり倒される

吉本芸人31人――。

「この本は芸人の取り扱い説明書であり応援歌である」

平成ノブシコブシ徳井健太の解説収録。

◆◆◆◆◆


真面目でど天然な愛すべき
西川きよし師匠。ダウンタウン浜田さんに耳たぶをいじられるほんこんさん。何もかもが用意周到、嫉妬が原動力の山里亮太君。本気で客にキレてるのになぜか許されるメッセンジャー黒田君。突然渡米、スケールのでかいバカっぷりで突き進むピース綾部君。「水曜日のダウンタウン」で話題の還暦バイト芸人リットン調査団。常にどこかふざけてる女・ガンバレルーヤよしこホノルルマラソンで驚異的なリタイアをしたトミーズ健さん。やることすべて無茶苦茶、乱だらけの極楽とんぼ加藤
……吉本歴30年超の「日本一心のない司会者」が、底知れぬ芸人愛と悪い笑顔で、吉本(と元吉本)芸人31人をいじり倒す!
キングコング西野の東野幸治論(再録)、平成ノブシコブシ徳井の解説(文庫書き下ろし)収録!

評価:★★★★★★★☆☆☆

下劣で腹黒な芸人:東野幸治の視点から、面白芸人たちの生き様をまとめたノンフィクション作品。関西育ちで芸人好きな僕の感性にぶっ刺さる、抱腹絶倒必至の爆笑本。もちろん、芸人のことをあまり知らない人でも楽しめる極上のエンタメ作品。

異常者たちが織り成すイカれたエピソードの数々に、僕の腹筋はなすすべもなく崩れさった。やっぱり、芸人という職業を目指す人たちはどこか狂っているんだなぁと思わされる。とにかく笑いたい人におススメ。疲れなどどこかに飛んで行ってしまうだろう。

 

キミとは致命的なズレがある/赤月カケヤ

第5回小学館ライトノベル大賞・優秀賞!!

海里克也(うみさと・かつや)は保健室で目を覚ました。
なぜここにいるのか?
保険医の鏡(かがみ)によると、階段で転んで気を失っていたらしい。
……覚えていない。
十歳のとき、大きな事故で両親と記憶を失ってしまった克也には、ここ数年の記憶しかない。
それはいいのだが……。

「見えないモノが見えてない?」
そんな鏡の問い掛けにドキリとする。

――自販機の陰に倒れている少女の身体――靴箱や鞄に入れられた不幸の手紙――。
思い当たる節はある。
これは幻覚? それとも、もう一人の自分が……いる?

少女の死の映像と指の感触、克也の過去に怯える担任教師、克也を殺人鬼と呼ぶ赤鬼のような形相の男。
追い詰められた克也は、唯一の心の支えである幼なじみの宮崎ひなた(みやざき・ひなた)のもとへ向かう。そして彼女が、幻覚に見る少女だと気づく……。

真実は目に映る――?


Kanon』『AIR』『CLANNAD』『リトルバスターズ!』『Angel Beats!』など、ヒット作を生み出し続ける、Key(株式会社ビジュアルアーツ)の麻枝准氏もその筆力を賞賛! 「第5回小学館ライトノベル大賞」にて優秀賞を受賞した問題作、ついに登場!

評価:★★★★★★★☆☆☆

記憶喪失の主人公が、謎の手紙を受け取る所から始まる猟奇サスペンス小説。とにかくプロットの完成度が図抜けており、全ての謎が回収される後半は一気読み不可避。正直、単巻ラノベ作品ではトップクラスの出来だと思う。

10年前に少女を殺害した犯人は誰なのか。主人公が失っている記憶とは。世間とのたった一つの「致命的なズレ」が引き起こした悲しい物語。サイコパスが活躍する作品が読みたい人におススメ。

 

カラフル/阿部暁子

高校入学式の朝、荒谷伊澄は駅のホームでひったくり犯を捕まえた。
その際に、犯人の前に出て足止めをしようとしたのが、車椅子に乗った少女だった。
その後の事情聴取で判明したのだが、渡辺六花というその少女も、伊澄と同じ高校の新入生だった。
弁が立ち気の強い六花に、伊澄はヤな女だな、と感じたのだが……?
夢を追い続けられなくなった少年と少女の挫折と再生の恋物語!

評価:★★★☆☆☆☆☆☆☆

車いすの女子高生と、膝を壊した元陸上部員の男子高校生が織り成す、挫折と再生の恋愛物語車いすで生活している人たちの苦労や考えを知れる良い作品なので、色んな人に読んでほしい作品ではある。

ただ、全体としての評価は★3つと割と辛目な評価をした。それは何故か。最終章が説教臭いからだ。クラスの皆が急に曝露大会みたいなことをしだし、長々としたセリフで障がい者とはなにか、区別と差別の違いなどについての自論を語りだす。伝えたいことはわかるのだが、如何せん茶番感が凄まじく、なんか急激に冷めてしまった。

これは、捻くれに捻くれている僕の感性が終わっていることが悪いんだと思う。実際、本作は高評価だし、「最終章の皆が議論するシーンに感動した」という感想もたくさんある。僕の感想としても、最終章以外は超面白いと思う。色んな人に読んでほしい作品。

 

白線以外、踏んだらアウト/田丸雅智

誰もがやったことのある〝あるある〟な遊び「道路の白線を踏み外したら死ぬ」が、意表を突いた展開から思いも寄らない結末に! そのほかにも「手のひらに〝人〟という字を3回書いて飲むと緊張がほぐれる」「食べ物を落としても3秒以内に拾えば大丈夫」「食べてすぐ横になると牛になる」「痛いの痛いの、飛んでいけ」などなど、誰もがどこかで聞いたことのあるシチュエーションを、現代ショートショートの名手・田丸雅智が大胆にアレンジ! 1話10分であなたを不思議な世界へ誘う、読み始めたらやめられない魅惑のショートショート全10編!

評価:★★☆☆☆☆☆☆☆☆

誰もが聞いたことのあるシチュエーションを基にしたショートショート作品集。発想は面白いと思うのだが、オチがあまりしっくりこない話が多く、あまり作品に入り込めなかった。ただ、1話1話は短いため、読書初心者にはおススメできる作品ではあると思う。

 

今週は以上。また来週。

2024年 6月 2週目 読書記録『ミステリークロック』『ZOO』『きら星きらり』他5作

どうも、ゆかりごはんです。

今週も、読んだ本の感想をまとめたので記録がてら記していこうと思う。

※下書きだけして投稿していなかったことに気づき、一週遅れの投稿です…。待ってくれた読者の皆様(そんな奴いねぇよ!)、すみませんでした。

 

ミステリークロック/貴志祐介

犯人を白日のもとにさらすために――防犯探偵・榎本と犯人たちとの頭脳戦。

様々な種類の時計が時を刻む晩餐会。主催者の女流作家の怪死は、「完璧な事故」で終わるはずだった。そう、居あわせた榎本径が、異議をとなえなければ……。表題作ほか、斜め上を行くトリックに彩られた4つの事件。

評価:★★★★★★★★☆☆

榎本シリーズ4作目。密室事件4編を収録した傑作短編集。表題作である『ミステリークロック』のトリックはかなり難解ではあったが、どの短編も読み応え抜群で超面白かった。『コロッサスの鉤爪』が一番好き

ただ、さすがに密室縛りがキツくなってきたのか、密室の定義が曖昧になってきている部分もある。鍵穴や防犯カメラなどのセキュリティ道具を活かした密室はほとんど出てこないため、防犯コンサルである榎本のシリーズでやる必要があるのかと言われれば、まぁ反論は出来ない。

本シリーズの見所、美人(自称)弁護士:純子のトンデモ推理は本作も健在。もはや狂気の沙汰である。ぶっ飛び理論を高らかに叫び、榎本に反論されてものたうち回る。最終的に完全論破されしょんぼり。純子…君は疲れてるんだよ…。

 

ZOO/乙一

最も注目される若手ナンバーワン、乙一のホラー短編集。毎日届く恋人の腐乱死体の写真。彼女を殺したのは誰? 「犯人探し」に奔走する男を描く表題作ほか、書き下ろしを含む全10編を収録。

評価:★★★★★★★★☆☆

乙一ダークサイド作品10編からなる短編集。全ての短編が「死」にまつわる話だが、切り口によって胸糞/コメディ/ミステリ/ホラーへと姿を変える。 もはやジャンルは不明。「何なんだこれは。」というキャッチコピーがこの本の全てを表している。

グロイのに美麗。胸糞なのに爽快。悲しいのに笑える。相反する感情を同時に味わえる至極の一冊。こんな感情を揺さぶられた短編集は初めてだ。興味を持ってくれたそこのあなた、是非、乙一ワールドを体感してほしい。

 

きら星きらり/坪井聖

孤独な少年メテルは病気の母のため、街で木の実を売り歩いていた。生まれながら頬に不思議な模様があり、力も強く小鳥や動物と話すこともできた自分達とは違う彼の個性に、誰も話そうとはしなかったので、売りに出ると大盛況なのにあっという間にいなくなってしまう。ある日、一緒に遊ぼう! と少女が誘って案内した先は……?「綺麗な世界が広がっている」星空の夜に起こったファンタジー

評価:★★★★★★☆☆☆☆

仲間外れの男の子が体験した一夜の不思議な出来事を描く、優しいファンタジー作品。絵本のような文体で読みやすく、作者が伝えたいメッセージが直に心に届く。作者のXを拝見したのだが、どうやら作中に挟まる絵は作者本人が書いたものであるとのこと。すごいなぁ。温かみを感じれる優しい絵が、物語への没入感を深めてくれている。

世界は綺麗で美しい。君はひとりぼっちなんかじゃない。そんな言葉は綺麗ごとだと笑う人たちもいるかもしれない。昔の僕もどちらかというと笑う側の人間だったかもしれない。それでも、今ではその綺麗ごとが誰かの命を救うこともあると思えるようになった。僕も成長しているのかなぁ。星たちを楽しませることができるような、笑顔溢れる人生を送りたいなぁ。

 

喫茶『猫の木』物語。不思議な猫マスターの癒しの一杯/植原翠

「かぶり物は脱ぎません! 」―喫茶店にいる猫頭の変わり者店主×OLの、癒し系ほのぼのストーリー。

恋愛不精のOL・有浦夏梅は、突然の辞令で海辺の田舎町に飛ばされてしまった。人間関係に悩み、会社を辞めようかとも考えはじめた彼女が出会ったのは、とある喫茶店『猫の木』。そこは居心地がよく親身になって悩みごとを聞いてくれる優しいマスターがいるのだが、なんとその人は猫のかぶり物を被っていて…。
行き交う人々、移ろう季節。のんびりした、けれど温かな時間が流れていく喫茶店の一風変わった日常物語。
「かぶり物は脱ぎません! 」―変わり者のマスターとOLの間にほんのり淡い恋が芽生えるかもしれない、癒し系ほのぼのストーリー。
小説投稿サイト「エブリスタ」での人気作、待望の書籍化。

評価:★★★★★☆☆☆☆☆

猫の被り物をしたマスターと理不尽に田舎に左遷されたOLが織り成す、ゆったりとした人情ラブストーリー。風貌はかなり個性的だが、お客様に対して優しく前向きになれる言葉をかけてくれるマスターのことが好きになること間違いなし。

マスターとOLとの両片思いの関係にニヤニヤしながらも、ところどころで「もっと押せ押せ!」とじれったくも感じたり…。このもどかしさが癖になる。やっぱり恋愛は傍から見ている時が一番楽しい!

 

忍鳥摩季の紳士的な推理/穂波了

忍鳥摩季は世の中で起きる超常現象を調査する専門家。
一見、ちょっと頼りない彼女が、世の中で起きる超常現象を利用した殺人事件を解決していくのだが、なぜか謎解きになると摩季の態度は一変してしまう・・・・・・。
彼女の背後にいる謎の「先生」とは!? 世にも奇妙な超常現象の世界を描く特殊設定ミステリー。

評価:★★★★☆☆☆☆☆☆

超常現象を悪用した殺人事件の謎を解き明かす、世にも奇妙な特殊設定短編ミステリ作品。空間転移、時間停止、精神操作、タイムリープ幽体離脱等が存在することを前提とした推理が展開される。

トンデモミステリかと思いきや、かなり綺麗に纏めきっており、完成度はかなり高い。一風変わったミステリ小説を読みたい人におススメです。

 

Strange Strange/浅井ラボ

「これが僕の真の力、なのか」秘められた力を使い、美少女たちと共に悪を滅ぼす少年・田尾君が直面した、とてつもなく凄惨な事態とは?
問題作「ぶひぶひ@だらだら」をはじめ、彼と秘密を持つ彼女の心温まる愛の物語「人でなしと恋」など
全4篇でお届けする、浅井ラボの(ある意味で)ハラハラドキドキの連作短編撰。使用前に注意書きをよく読んでね!

評価:★★★★★★★★★☆

再読。この作品、このブログで以前紹介したことがあった気がするけど、まぁ良いか!超好きな作品だし。ということで、本作は不条理でグロテスクな短編集である。生き地獄/拷問/四肢切断/喰人/尊厳破壊、グロの限りを尽くした毒薬本。おそらくラノベ媒体で最もグロ&胸糞な作品

まず、作者がこの作品を一般受けさせようとは全く考えていない。作者のゴア趣味が前面に押し出されている作品であり、血が出ていないページの方が少ない。これ、誇張表現ではなく、マジである。しかも、500ページくらいの長さがある、ライトノベルって何だっけ…?

個人的にめっっっちゃ好きだが、ぜっっったいに人におススメできない最低最悪の超絶傑作。気になる方は自己責任で。

 

 

次に紹介する作品は酷評枠です。苦手な方はブラウザバック推奨です。

 

 

ひとりぼっちの殺人鬼/櫻井千姫

【きっと見つかる、大切なもの。
――実業之日本社文庫GROWからあなたへ。】


少女は親友を殺した。
そして、少女だけが大人になった――。
センセーショナルな事件に潜む「なぜ?」
人の心の闇と謎に迫る《泣ける》衝撃作!!


2004年、未成年による殺人事件が起きた。
ひとりの少女が親友の少女を殺したのだ。

「人を殺してみたかった」

――ショッキングな供述は世間を震撼させるが、
その動機は果たして真実なのか? 

全てを失った後、名前を変え普通の女性として社会復帰した「恵」を、
被害者の兄と女性ジャーナリストが追いつめてゆく。

心の闇とその再生をえがく渾身作!

評価:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

酷評枠とはいっても、先週酷評した作品と比較すると見所ある作品ではある。殺人を犯した小学生と残された遺族たちにフォーカスした作品で、取り扱うテーマはすごく良くてワクワクした!のだが、なんの盛り上がりも無く、消化不良で終わってしまった…。なんだかテーマが重すぎて筆者もどう着地させて良いのか迷子になった感じがする。

そもそも、小学生にして殺人を犯してしまった主人公に感情移入できない時点で他人事感が強く、物語に入り込めなかった。遺族側の方も、同情はするが、行動に全く共感できなかった。ラストのシーンとかもう何コイツ…って感じだった。正直、殺人を犯した側よりも残された遺族側の方が頭おかしいと思う。

セリフもいちいち長く、かなり説教臭い。このセリフいる?って何度思ったことか。いちいち性的な描写も多いし、本筋と関係ない話が多すぎる。あと、本作は誤植も多い。些細な間違いならスルーできるが、登場人物の名前を間違えているのはさすがに擁護できない。物語に没入しようとしている読者にとって、この誤植がかなりのノイズとなるのは間違いないだろう。色々と惜しい作品である。

 

今週は以上。また来週。

2024年 6月 1週目 読書記録『プロジェクト・ヘイル・メアリー』『俺ではない炎上』『誰が勇者を殺したか』他6作

どうも、ゆかりごはんです。

今週は、再読含め9作読了した。読了した本は以下の通りである。

 

プロジェクト・ヘイル・メアリー/アンディ・ウィアー

地球上の全生命滅亡まで30年……。
全地球規模のプロジェクトが始動した!

グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号――。
ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を発動。遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放った……。

『火星の人』で火星の、『アルテミス』で月での絶望的状況でのサバイバルをリアルに描いた著者が、人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント。

評価:★★★★★★★★★★

最近読んだSF本の中ではぶっちぎりNo.1。現代SF小説の最高到達点であることは間違いないだろう。エンタメ濃度が高すぎて、脳が快楽物質に溺れる感覚を味わえる劇薬小説だ。一度読み始めたら、徹夜を覚悟した方が良いだろう

こんなにも素晴らしい小説をネタバレ無しで読めた自分は、本当に幸せ者だと思う。物語の本筋が圧倒的に面白いため、SFを普段読まない人も一度は読むべき超絶傑作。この記事を読んでくれた諸君、すぐに本作を買ってさっさと読むのだ。後悔は絶対にさせない。

 

俺ではない炎上/浅倉秋成

ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。
既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。
まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。
会社も、友人も、家族でさえも。
ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。
必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。

評価:★★★★★★★★★☆

僕にとって初めての浅倉秋成小説である本作。正直に言おう。なぜ僕はもっと早くこの作者の作品を読まなかったのだろうと後悔した。面白すぎる。

本作は、身に覚えのない殺人の犯人に仕立て上げられた男と、彼を取り巻く事件関係者たちが織り成す群像ミステリ作品である。テンポ/構成/キャラ/伏線、全てがハイレベルでエンタメ成分マシマシの超絶傑作であり、読み始めたが最後、もうページを捲る手が止まらなくなる。想像の遥か上をいく真相ではあるのだが、それを無理筋に思わせない作者の高い筆力には脱帽である。

 

誰が勇者を殺したか/駄犬

勇者は魔王を倒した。同時に――帰らぬ人となった。

魔王が倒されてから四年。平穏を手にした王国は亡き勇者を称えるべく、数々の偉業を文献に編纂する事業を立ち上げる。かつて仲間だった騎士・レオン、僧侶・マリア、賢者ソロンから勇者の過去と冒険話を聞き進めていく中で、全員が勇者の死の真相について言葉を濁す。「何故、勇者は死んだのか?」勇者を殺したのは魔王か、それとも仲間なのか。王国、冒険者たちの業と情が入り混じる群像劇から目が離せないファンタジーミステリ。

評価:★★★★★★★★☆☆

旅の仲間の証言を基に、勇者の死の真相を暴いていくミステリ風味のヒューマンドラマ小説。ラノベだからと侮るなかれ。非常に完成度の高い名作である。人間不信の天才たちが、才能0だが超努力家な勇者にほだされて心を通わせていく過程に涙した。王道展開に弱いんだ、僕は。

物語の完成度も高いのだが、本作は後書きも素晴らしい。ラノベというジャンルで本屋大賞を本気で狙い努力している作者の熱意がありありと描かれている。ラノベも嗜む僕としては応援したい。ラノベの偏見をぶち壊してほしい

 

手作り雑貨ゆうつづ堂 アイオライトの道標/植原翠

パワーストーン羅針盤のように勇気を後押しして一歩先へと導いてくれる

『手作り雑貨・ゆうつづ堂』は、とある海辺の田舎の町にぽつんと立つ、祖母が営む小さな雑貨店。
狭い店内には、パワーストーンを使った様々な雑貨が並べられている。
想いのこもったパワーストーンには精霊が宿り、お客さんたちの小さな一歩を後押ししてくれる。
詩乃がお店を手伝い始めてから一か月が経ったころ、前に勤めていた会社の先輩がやってきて……?

白水晶の精霊・フクと共に、祖母の大事なお店を守っていくあたたかな物語――待望のシリーズ第二弾!

評価:★★★★★★☆☆☆☆

ゆうつづ堂シリーズ二作目となる本作。前作同様、精霊たちに癒されながらも前向きになれる作風で、読んでいて非常にほっこりした気持ちになれる。心がねじ切れている僕の心にじわじわと染み込んでいく優しさに包まれた作品である

本作のテーマは「個人の生き方それぞれの幸せがある」であると作者様がおっしゃっていたが、まさにその通りであると感じた。自分はこのままで良いのだろうか。生きているのが辛い。これからどうした方が良いのかわからない。そんな人にこそ本作を読んでほしいと思う。

 

狐火の家/貴志祐介

『硝子のハンマー』の興奮再び! 防犯探偵・榎本が4つの密室に挑む!

長野県の旧家で、中学3年の長女が殺害されるという事件が発生。突き飛ばされて柱に頭をぶつけ、脳内出血を起こしたのが死因と思われた。現場は、築100年は経つ古い日本家屋。玄関は内側から鍵がかけられ、完全な密室状態。第一発見者の父が容疑者となるが……(「狐火の家」)。表題作ほか計4編を収録。防犯コンサルタント(本職は泥棒?)榎本と、美人弁護士・純子のコンビが究極の密室トリックに挑む、防犯探偵シリーズ、第2弾!月9ドラマ『鍵のかかった部屋』原作!

評価:★★★★★★☆☆☆☆

再読本。密室事件4編を収録したミステリ短編集。密室事件とはいっても、犯人が無理して密室を作り出す訳ではなく、結果として密室になってしまっているという点が非常に面白い。安心と信頼の貴志祐介クオリティである

あと、本作から若手美人(自称)弁護士:純子が徐々にポンコツ属性を獲得していく。知的な女性を辱めたいという貴志祐介の性癖が滲み出ているのだろう。事件自体はかなりエグいのに、全体的にコミカルで楽しく読めるのは純子がいるおかげである。感謝。

 

復讐は合法的に/三日市零

六年付き合った彼氏に手酷く裏切られたOL・麻友が出会ったのは「合法復讐屋」エリス。
弁護士資格と法律知識を活かして麻友の復讐を代行したエリスは、その後も様々な依頼をこなす。
妄想じみた依頼から辿りつく、殺人事件の意外な真相とは。法律の通じない権力をもつ相手に、エリスはどう立ち向かうのか。
そして最後のターゲットはエリスと同じ「復讐屋」……。
異色の連作リーガルミステリー!

評価:★★★★★☆☆☆☆☆

若手弁護士:エリスが、『合法復讐屋』として4つの依頼を遂行する連作短編集。法律の範囲内だが道徳の範囲外である手段を用いて、世の悪人たちを成敗していく勧善懲悪ものである。登場人物も皆個性的で魅力的だし、短編でサクッと読めるので、読書初心者にもおススメできる作品だ。

 

彼女が遺したミステリ/伴田音

婚約者の一花が病気でこの世を去った――。哀しみにうちひしがれる僕に一通の手紙が届く。送り主は亡き恋人。
そこに記してあったのは、「謎解き」だった。彼女から出される謎を解いていくたびに、明かされていく恋人の想い。喪失と再生。
「誰かを愛するということ」の大切さが胸にささる、涙なしでは読めない恋愛ミステリー。

評価:★★★★★☆☆☆☆☆

亡き恋人から手紙が届く所から始まる、切なくて悲しい恋愛ミステリ作品。表紙に惹かれてなんとなく読んでみたのだが、すごく良い作品だった。

ラノベだから文章が簡素で平坦?ミステリ部分にかなり無理がある?周りの人間が皆良い人すぎる?そんな粗探しはしなくてもよい。最後に明かされる、死期を悟った彼女の独白。笑顔を取り繕う彼女の悲痛な叫び。それだけで読む価値のある名作である

 

多様性の科学/マシュー・サイド

なぜ一部の組織や社会はほかに比べて革新的なのか?
経済をさらに大きく繁栄させるには、多様性をどう生かせばいいのか?
致命的な失敗を未然に見つけ、生産性を高める組織改革の全てがここにある


シリーズ10万部突破! (2023/3 ディスカヴァー・トゥエンティワン調べ)

◆なぜCIAは9.11を防げなかったのか?
→第1章 画一的集団の「死角」 へ
◆なぜ一流の登山家たちがエベレストで遭難したのか?
→第3章 不均衡なコミュニケーション へ
◆白人至上主義の男が間違いに気づけたきっかけとは?
→第5章 エコーチェンバー現象 へ

評価:★★★☆☆☆☆☆☆☆

多様性という観点から、世間に蔓延る事象を紐解いていく一冊。物凄い人気で評価の高い本だったので読んでみたのだが…自分には合わなかった。すみません。

作者の持論に合致する都合の良い引用しか書かれておらず、なんだか他人の意見を強く押し付けられているような感じがした。書いている内容はまぁ正しい部分もあるのだろうが、極論であるため理解に苦しむ部分もあった。ただ、多様性の本質を全く理解せずに、人種や性差を叫び続ける集団にはぜひとも読んでほしい一冊ではあると思う。

 

 

以下、酷評します。苦手な方はブラウザバック推奨です。

 

 

君を守ろうとする猫の話/夏川草介

お前なら、きっと本を取り戻せるはずだ。

幸崎ナナミは十三歳の中学二年生である。喘息の持病があるため、あちこち遊びに出かけるわけにもいかず学校が終わるとひとりで図書館に足を運ぶ生活を送っている。その図書館で、最近本がなくなっているらしい。館内の探索を始めたナナミは、青白く輝いている書棚の前で、翡翠色の目をした猫と出会う。

なぜ本を燃やすんですか?

「一番怖いのは、心を失うことじゃない。失った時に、誰もそれを教えてくれないこと。誰かを蹴落としたときに、それはダメだと教えてくれる友達がいないこと。つまりひとりぼっちだってこと」

ようこそ、新たな迷宮へ。

評価:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

今年読んだ小説の中でワースト1,2を争うレベルの作品。本当に最低で最悪な小説。こんな害悪本が店頭に並んでいることが許容できなくなるレベルで腹が立った。

本作は、読書好きの少女が、不朽の名作と呼ばれる文芸作品をこの世から消そうとする悪役に立ち向かっていく話である。大筋のストーリーはまぁよくある話で、特に語ることもない。どうしても許せないのは、現代で出版されている単純娯楽小説のことを、「売れれば良い中身のない内容の薄い本」と断定したことである。

その内容の薄い本とやらに僕はどれだけ救われてきたか。読書家とは、過去の名作を崇拝する異常な人物を指す言葉なのか。その理論でいくなら、この本自体も「売れれば良い中身のない内容の薄い本」に当てはまるだろうが。僕をこれまで支えてくれたエンタメ作品たちを馬鹿にされた気がして腸が煮えくり返った。

同著者の「神様のカルテ」は大好きな作品であるがゆえに、これが夏川先生の読書論だとは信じたくない。本作は、僕の中の夏川先生像を大きく揺るがす程の問題作であった。もう表紙すら見たくない。

 

以上。また来週。