ゆかりごはんの縁結び -読書記録-

とにかく面白い小説が読みたい…!

『アバター』山田悠介:依存って怖いよね

 

アバター

著者 :山田悠介

出版社:角川文庫

ページ:256

満足度:★★★★★★★☆☆☆

 

作品紹介

僕が小学・中学生の頃に、若者を中心に大ヒット作を連発していた人気作家:山田悠介によるホラー?作品『アバター』。今作は、橋本愛主演で映画化も果たしており、当時山田悠介ファンだった僕は映画館まで足を運んで鑑賞したのを覚えている。

小学生の頃の僕は山田悠介の作品が本当に好きで、『復讐したい』までの作品は、なけなしのお小遣いで全て購入していた。しかし、中学生になってからは貴志祐介宮部みゆきにドはまりし、自然と山田悠介作品を読むことはなくなった。

では、なぜ今更今作を読んだのかというと、実家の本棚に埋もれていたのを偶然発掘したためである。久々に実家に帰り、本棚に積んであった小説や漫画を整理していたところ、山田悠介作品が山のように出るわ出るわ。正直内容はほとんど覚えていないものばかりであったが、非常に懐かしい気持ちになり、無性に読み返したくなったのだ。

自分語りはこれぐらいにして、今作の感想を記していこうと思う。

 

以下、あらすじ

高校2年生で初めて携帯を手に入れた道子は、クラスを仕切る女王様からSNSサイト"アバQ"に登録させられる。地味な自分の代わりに、自らの分身である"アバター"を着飾ることにハマっていく道子だが――!?

 

レアアイテムが世界を変える

本作は、地味で不細工でギリギリ虐められていない根暗な女子高生:阿武隈川道子(通称:アブコ)が、絶大な権力を持った虐めっ子:阿波野妙子に、着せ替えアプリ「アバQ」を半ば強制的にインストールさせられるところから始まる。「アバQ」とは、自分のアバターを好きにコーディネートできるアプリであり、アバQのレアアイテムを持っているかどうかでスクールカーストが決まるほど、若者の間で大流行している。

ちなみに、この虐めっ子である阿波野はマジでやべー女で、クラスメイト全員に自分のことを「阿波野様」と呼ばせており、気に入らないやつがいれば殴る蹴るの暴行を厭わない。こんな奴と同じクラスになった時点で、華々しい高校生活は詰んだも同然である。

アブコは、最初は全く乗り気ではなかったものの、将来の夢がファッションデザイナーであったこともあり、自分のアバターを着飾ることにすっかりハマってしまう。しかし、豪華なレアアイテムは課金しないと買えず、貧乏であるアブコには到底手に入るはずのない品物だった。

だがある日、アブコは無料ガチャキャンペーンにて、男女各50名ずつしか当たらない超激レアアイテムを引き当ててしまう。すると、クラスメイト達は「阿武隈川さん、スゴイ!」となり、一躍話題の中心人物へと変貌する。一夜にしてアブコの世界が変わったのだ。ここまでは良かったのだが…。

 

女王様・アブコ

アブコはもっと人気者になりたいと願い、レアアイテムに異常に執着するようになる。課金のため、援交目的の男から金を盗んだりといった犯罪行為にまで手を染めるようになる。そんなこんなで、アブコはレアアイテムを100個以上手に入れることに成功する。

そんなある日、アバQ内で、アバターコンテスト大会が開催される。アブコは持ち前のファッションセンスと豊富なアイテムを駆使して、なんとびっくり、1000万人の頂点に立ってしまう。日本一位である。さて、そうなるとスクールカーストはどうなるか。そう、全てがひっくり返るのである。

アブコはクラス、いや、学校の女王様となり、深夜の学校でサークル集会を開くようになる。しかも、サークルメンバーは全員ガスマスク着用必須である。イカれている。アブコに陶酔しきっている膨大な数の信者たちは皆、アブコのことを「道子様」と呼び、サークル内の階級が上がると大粒の涙を流して道子様に感謝の意を告げる。傍から見れば不気味な宗教である。てか学校の警備員は何をしているんだ。こんな奴らさっさと追い出してやれ。

そして、女王アブコは、信者から金を巻き上げて好き勝手するようになる。好きな男性に高価なプレゼントを買ってあげたり、自分の顔をアバターの顔に整形したりする。さらに、虐めっ子:阿波野を信者たちでフルボッコにし、退学にまで追いやる。やりたい放題である。こうして、アブコはカーストの頂点に君臨することとなる。

 

依存/執着って怖いねっていう話

終盤では、レアアイテムを手に入れるため、そして個人的な復讐のために主人公は完全に一線を超えてしまう。放火もすれば死体遺棄もすれば殺人もする。タブーの嵐である。僕みたいな無趣味な人間は、一つのことにこれだけ執着できるってすごいなぁ…と感心してしまった。

こういう作品を読むと、何かに依存して執着することは本当に怖いことだなと思う。最近、youtuberやtiktokerが登録者や閲覧数に執着するあまり、もはや正気とは思えない行動を取り、大炎上しているのをよく見かける。叩く方も叩く方で、自分本位の正義に執着し、息をするように誹謗中傷コメントを書き込んでしまう。何かに強く依存してしまうと、人は良し悪しの判断力を失ってしまうのだろうか。恐ろしいねぇ。

 

 

実に十数年ぶりの山田悠介作品であったが、期待以上に楽しめた。そのため、気が向いたら、また別の山田作品を読もうと思っている。『リアル鬼ごっこ』は小学生の時に10周以上していてもうお腹一杯なので、『×ゲーム』とか『オール!』とか『その時までサヨナラ』とか、面白かった覚えはあるがほとんど内容を覚えていない作品にしようかな。