ゆかりごはんの縁結び -読書記録-

とにかく面白い小説が読みたい…!

2024年5月 4週目 読書記録『体育館の殺人』『黒牢城』『777』『死神の精度』他4作

どうも、ゆかりごはんです。

今週読んだ本は、初読本7作、再読本1作の計8作である。

体育館の殺人/青崎有吾

放送部部長が何者かに殺害された旧体育館の壇上は、密室状態だった。嫌疑をかけられた先輩のために、柚乃は学内一の天才に縋った。学内で暮らすという変人に。第22回鮎川哲也賞受賞作。

『地雷グリコ』で今最も熱い作者:青崎有吾のデビュー作。第22回鮎川哲也賞受賞作。

ミステリとしての完成度はもちろん、登場人物も個性的で、読んでいて非常に楽しい作品だった。本格ミステリは、探偵役のキャラに感情移入しにくいため個人的には苦手なジャンルなのだが、本作を読んで考えを改めることにした。いやぁ、面白かったなぁ。

本作の探偵役はアニオタで、隙あらばひと昔前のオタクネタをぶち込んでくるのも見所BLEACHネタの「錯覚してたんだ!鏡花水月!」は爆笑した。世代ドストライクである。本作は続編が出ているそうなので、今後も追っていきたいと思う。

 

黒牢城/米澤穂信

祝 第166回直木賞受賞!

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の集大成。『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。

戦国時代を舞台とした、史実に基づく歴史ミステリ連作短編集。第166回直木賞を受賞した傑作短編集。ミステリとしてはもちろん、戦国時代小説としても最高峰のエンタメ力を誇る小説

時代小説調の文体ではあるが、そこはさすがの米澤穂信先生。圧倒的な筆力でかなり読みやすいため、時代小説初心者にもおススメの一冊である。自信をもって人に薦めることができる大傑作

 

777/伊坂幸太郎

そのホテルを訪れたのは、逃走中の不幸な彼女と、不運な殺し屋。そして――

累計300万部突破、殺し屋シリーズ書き下ろし最新作
『マリアビートル』から数年後、物騒な奴らは何度でも!

やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだった――。時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる……。

そのホテルには、物騒な奴らが群れをなす!

伊坂殺し屋シリーズ四作目。ホテルに集いし殺し屋たちがぶつかり合う痛快エンタメ小説。抜群のハラハラ感と疾走感を味わえる超傑作

前作『AX』では家族愛がテーマであったが、今作は幸せとは何かがテーマだと感じた。「他人と比べた時点で、不幸は始まりますね」はシンプルだけれども心に響く名言だと思う。昨今のSNS時代において、他人と比較することなく自分にとっての幸せを見つける大切さを学べた気がする。

ラストの小粋な演出も本当に良かった。さすが伊坂幸太郎、この伏線回収は見事としか言いようがない。終わり方はこれまでのシリーズで一番好き。

 

死神の精度/伊坂幸太郎

1、CDショップに入りびたり、 2、苗字が町や市の名前であり、 3、受け答えが微妙にずれていて、 4、素手で他人に触ろうとしない。 ――そんな人物が身近に現れたら、それは死神かもしれません。1週間の調査ののち、その人間の死に〈可〉の判断をくだせば、翌8日目には死が実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。 日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作ほか、「死神と藤田」「吹雪に死神」「恋愛で死神」「恋路を死神」「死神対老女」を収録。

二作続いての伊坂幸太郎作品。死神が死期の近い人間の元に派遣され、その生死が正しいか見定める連作短編集。日本推理作家協会賞受賞作。

人間にとって死は特別なモノではない。だけれども、人間は後悔しないよう「今」を必死に生きていく。人間の死をテーマとした、爽快感溢れる大傑作

 

少女を殺す100の方法/白井智之

とある名門女子中学校。ある日、鍵のかかった二年A組の教室で、生徒20人が死体で見つかった。同級生を皆殺しにした犯人は誰なのか? 事件は思いもよらない方向へ転がっていく。 (少女教室) 少女20人の死をテーマに紡がれる、5つの本格ミステリ

グロ作家として有名な白井智之による、題名通りのスプラッターミステリ。誇張でもなんでもなく、本当に題名通りの内容である。とにかく少女が死ぬ。死にまくる。一話につき20人は死ぬ。狂気と血肉に塗れた短編5編を収録。

ただグロイだけでなく、話の完成度が異常に高いのも憎い。トンデモ世界観から構成される論理的な結末は見事。読みたくないのに、ページを捲る手が止まらなくなる。罪深い小説だ…。

余談ではあるが、Xのフォロワー様が白井智之先生のことを「鬼畜系特殊設定パズラー」と呼んでおり、ものすごくしっくりきて笑ってしまった。こういう表現が出来るようになりたいと思う今日この頃である。

 

紗央里ちゃんの家/矢部嵩

祖母が風邪で死んだと知らされた小学5年生の僕。叔母夫婦の家からは従姉の紗央里ちゃんの姿も消え、叔母たちの様子はどこかおかしい。僕はこっそり家中を探し始める。第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞。

従姉の紗央里ちゃんの家に訪れるだけの話。ただそれだけなのにめちゃくちゃ怖い。本作でしか味わえない何かがあるのは間違いない。第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。

とにかく本作は日常と非日常の境界線を破壊しにくる。出てくる奴らが全員狂人でツッコミ役が不在なので、違和感しかない描写が連発されるのにもかかわらず、誰にも触れられずに物語内の時間が経過していく。狂気に気づいているのは読者だけなのだ。文体も独特で気味悪く、最初から最後まで異常たっぷり。不気味でクレイジーな世界観にどっぷり浸りたい人におススメ

 

硝子のハンマー/貴志祐介

日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には強化ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて……。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。日本推理作家協会賞受賞作。月9ドラマ『鍵のかかった部屋』原作!

再読。エンタメ神:貴志祐介による長編ミステリ小説。 密室殺人のトリックはもちろん凄いのだが、それ以上に作品の構成が素晴らしい。犯人が殺人に手を染めるまでの境遇や葛藤を緻密に描いており、没入感が半端ない。 推理小説が苦手な人にもおススメできる大傑作

 

 

次に紹介する作品は、辛口な感想となっている。酷評が苦手な方はブラウザバック推奨である。

 

 

 

 

 

 

アリバイ崩し承ります/大山誠一郎

殺人を告白して死んだ推理作家のアリバイとは!?
新米刑事が思わず通う、鮮やかすぎる謎解き――

時を戻すことができました。アリバイは、崩れました――。
美谷時計店には、「時計修理承ります」だけでなく
「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある。
「時計にまつわるご依頼は何でも承る」のだという。
難事件に頭を悩ませる捜査一課の新米刑事は、アリバイ崩しを依頼する。
ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ、
山荘の時計台で起きた殺人のアリバイ……7つの事件や謎に、店主の美谷時乃が挑む。
あなたはこの謎を解き明かせるか?

新米刑事と時計屋店主が織りなす安楽椅子探偵物のミステリ短編集。実写ドラマ化もされているため、おそらく人気作なのだろう。ただ、ハッキリ言わせてもらうと僕には全く刺さらなかった。

とにかく刑事側が全員おバカすぎて、読んでいて本当にイライラする。事情聴取の態度が真面目そうという理由だけで容疑者から除くクセに、動機があり態度も悪いという理由だけでアリバイのある容疑者を犯人扱いするのだ。心象だけで犯人と決めつけるな。

その上、この新米刑事はただの時計屋の店主である女性に、事件の詳細な情報をペラペラと喋りまくるという愚行を繰り返す。せめて少し情報を伏せるとかしろと言いたくなる。職業倫理感を失いすぎだろう。短編である都合上仕方ないのかもしれないが、さすがに看過できないレベルである。

事件概要を語るパートも冗長で退屈だし、肝心のアリバイトリックもこじつけ感が凄まじい。奇をてらおうとしすぎて、逆に滑ってる印象だ。途中で読むのが辛くなってしまった。

 

今週はこれまで、また来週。