ゆかりごはんの縁結び -読書記録-

とにかく面白い小説が読みたい…!

2024年 6月 1週目 読書記録『プロジェクト・ヘイル・メアリー』『俺ではない炎上』『誰が勇者を殺したか』他6作

どうも、ゆかりごはんです。

今週は、再読含め9作読了した。読了した本は以下の通りである。

 

プロジェクト・ヘイル・メアリー/アンディ・ウィアー

地球上の全生命滅亡まで30年……。
全地球規模のプロジェクトが始動した!

グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号――。
ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を発動。遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放った……。

『火星の人』で火星の、『アルテミス』で月での絶望的状況でのサバイバルをリアルに描いた著者が、人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント。

評価:★★★★★★★★★★

最近読んだSF本の中ではぶっちぎりNo.1。現代SF小説の最高到達点であることは間違いないだろう。エンタメ濃度が高すぎて、脳が快楽物質に溺れる感覚を味わえる劇薬小説だ。一度読み始めたら、徹夜を覚悟した方が良いだろう

こんなにも素晴らしい小説をネタバレ無しで読めた自分は、本当に幸せ者だと思う。物語の本筋が圧倒的に面白いため、SFを普段読まない人も一度は読むべき超絶傑作。この記事を読んでくれた諸君、すぐに本作を買ってさっさと読むのだ。後悔は絶対にさせない。

 

俺ではない炎上/浅倉秋成

ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。
既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。
まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。
会社も、友人も、家族でさえも。
ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。
必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。

評価:★★★★★★★★★☆

僕にとって初めての浅倉秋成小説である本作。正直に言おう。なぜ僕はもっと早くこの作者の作品を読まなかったのだろうと後悔した。面白すぎる。

本作は、身に覚えのない殺人の犯人に仕立て上げられた男と、彼を取り巻く事件関係者たちが織り成す群像ミステリ作品である。テンポ/構成/キャラ/伏線、全てがハイレベルでエンタメ成分マシマシの超絶傑作であり、読み始めたが最後、もうページを捲る手が止まらなくなる。想像の遥か上をいく真相ではあるのだが、それを無理筋に思わせない作者の高い筆力には脱帽である。

 

誰が勇者を殺したか/駄犬

勇者は魔王を倒した。同時に――帰らぬ人となった。

魔王が倒されてから四年。平穏を手にした王国は亡き勇者を称えるべく、数々の偉業を文献に編纂する事業を立ち上げる。かつて仲間だった騎士・レオン、僧侶・マリア、賢者ソロンから勇者の過去と冒険話を聞き進めていく中で、全員が勇者の死の真相について言葉を濁す。「何故、勇者は死んだのか?」勇者を殺したのは魔王か、それとも仲間なのか。王国、冒険者たちの業と情が入り混じる群像劇から目が離せないファンタジーミステリ。

評価:★★★★★★★★☆☆

旅の仲間の証言を基に、勇者の死の真相を暴いていくミステリ風味のヒューマンドラマ小説。ラノベだからと侮るなかれ。非常に完成度の高い名作である。人間不信の天才たちが、才能0だが超努力家な勇者にほだされて心を通わせていく過程に涙した。王道展開に弱いんだ、僕は。

物語の完成度も高いのだが、本作は後書きも素晴らしい。ラノベというジャンルで本屋大賞を本気で狙い努力している作者の熱意がありありと描かれている。ラノベも嗜む僕としては応援したい。ラノベの偏見をぶち壊してほしい

 

手作り雑貨ゆうつづ堂 アイオライトの道標/植原翠

パワーストーン羅針盤のように勇気を後押しして一歩先へと導いてくれる

『手作り雑貨・ゆうつづ堂』は、とある海辺の田舎の町にぽつんと立つ、祖母が営む小さな雑貨店。
狭い店内には、パワーストーンを使った様々な雑貨が並べられている。
想いのこもったパワーストーンには精霊が宿り、お客さんたちの小さな一歩を後押ししてくれる。
詩乃がお店を手伝い始めてから一か月が経ったころ、前に勤めていた会社の先輩がやってきて……?

白水晶の精霊・フクと共に、祖母の大事なお店を守っていくあたたかな物語――待望のシリーズ第二弾!

評価:★★★★★★☆☆☆☆

ゆうつづ堂シリーズ二作目となる本作。前作同様、精霊たちに癒されながらも前向きになれる作風で、読んでいて非常にほっこりした気持ちになれる。心がねじ切れている僕の心にじわじわと染み込んでいく優しさに包まれた作品である

本作のテーマは「個人の生き方それぞれの幸せがある」であると作者様がおっしゃっていたが、まさにその通りであると感じた。自分はこのままで良いのだろうか。生きているのが辛い。これからどうした方が良いのかわからない。そんな人にこそ本作を読んでほしいと思う。

 

狐火の家/貴志祐介

『硝子のハンマー』の興奮再び! 防犯探偵・榎本が4つの密室に挑む!

長野県の旧家で、中学3年の長女が殺害されるという事件が発生。突き飛ばされて柱に頭をぶつけ、脳内出血を起こしたのが死因と思われた。現場は、築100年は経つ古い日本家屋。玄関は内側から鍵がかけられ、完全な密室状態。第一発見者の父が容疑者となるが……(「狐火の家」)。表題作ほか計4編を収録。防犯コンサルタント(本職は泥棒?)榎本と、美人弁護士・純子のコンビが究極の密室トリックに挑む、防犯探偵シリーズ、第2弾!月9ドラマ『鍵のかかった部屋』原作!

評価:★★★★★★☆☆☆☆

再読本。密室事件4編を収録したミステリ短編集。密室事件とはいっても、犯人が無理して密室を作り出す訳ではなく、結果として密室になってしまっているという点が非常に面白い。安心と信頼の貴志祐介クオリティである

あと、本作から若手美人(自称)弁護士:純子が徐々にポンコツ属性を獲得していく。知的な女性を辱めたいという貴志祐介の性癖が滲み出ているのだろう。事件自体はかなりエグいのに、全体的にコミカルで楽しく読めるのは純子がいるおかげである。感謝。

 

復讐は合法的に/三日市零

六年付き合った彼氏に手酷く裏切られたOL・麻友が出会ったのは「合法復讐屋」エリス。
弁護士資格と法律知識を活かして麻友の復讐を代行したエリスは、その後も様々な依頼をこなす。
妄想じみた依頼から辿りつく、殺人事件の意外な真相とは。法律の通じない権力をもつ相手に、エリスはどう立ち向かうのか。
そして最後のターゲットはエリスと同じ「復讐屋」……。
異色の連作リーガルミステリー!

評価:★★★★★☆☆☆☆☆

若手弁護士:エリスが、『合法復讐屋』として4つの依頼を遂行する連作短編集。法律の範囲内だが道徳の範囲外である手段を用いて、世の悪人たちを成敗していく勧善懲悪ものである。登場人物も皆個性的で魅力的だし、短編でサクッと読めるので、読書初心者にもおススメできる作品だ。

 

彼女が遺したミステリ/伴田音

婚約者の一花が病気でこの世を去った――。哀しみにうちひしがれる僕に一通の手紙が届く。送り主は亡き恋人。
そこに記してあったのは、「謎解き」だった。彼女から出される謎を解いていくたびに、明かされていく恋人の想い。喪失と再生。
「誰かを愛するということ」の大切さが胸にささる、涙なしでは読めない恋愛ミステリー。

評価:★★★★★☆☆☆☆☆

亡き恋人から手紙が届く所から始まる、切なくて悲しい恋愛ミステリ作品。表紙に惹かれてなんとなく読んでみたのだが、すごく良い作品だった。

ラノベだから文章が簡素で平坦?ミステリ部分にかなり無理がある?周りの人間が皆良い人すぎる?そんな粗探しはしなくてもよい。最後に明かされる、死期を悟った彼女の独白。笑顔を取り繕う彼女の悲痛な叫び。それだけで読む価値のある名作である

 

多様性の科学/マシュー・サイド

なぜ一部の組織や社会はほかに比べて革新的なのか?
経済をさらに大きく繁栄させるには、多様性をどう生かせばいいのか?
致命的な失敗を未然に見つけ、生産性を高める組織改革の全てがここにある


シリーズ10万部突破! (2023/3 ディスカヴァー・トゥエンティワン調べ)

◆なぜCIAは9.11を防げなかったのか?
→第1章 画一的集団の「死角」 へ
◆なぜ一流の登山家たちがエベレストで遭難したのか?
→第3章 不均衡なコミュニケーション へ
◆白人至上主義の男が間違いに気づけたきっかけとは?
→第5章 エコーチェンバー現象 へ

評価:★★★☆☆☆☆☆☆☆

多様性という観点から、世間に蔓延る事象を紐解いていく一冊。物凄い人気で評価の高い本だったので読んでみたのだが…自分には合わなかった。すみません。

作者の持論に合致する都合の良い引用しか書かれておらず、なんだか他人の意見を強く押し付けられているような感じがした。書いている内容はまぁ正しい部分もあるのだろうが、極論であるため理解に苦しむ部分もあった。ただ、多様性の本質を全く理解せずに、人種や性差を叫び続ける集団にはぜひとも読んでほしい一冊ではあると思う。

 

 

以下、酷評します。苦手な方はブラウザバック推奨です。

 

 

君を守ろうとする猫の話/夏川草介

お前なら、きっと本を取り戻せるはずだ。

幸崎ナナミは十三歳の中学二年生である。喘息の持病があるため、あちこち遊びに出かけるわけにもいかず学校が終わるとひとりで図書館に足を運ぶ生活を送っている。その図書館で、最近本がなくなっているらしい。館内の探索を始めたナナミは、青白く輝いている書棚の前で、翡翠色の目をした猫と出会う。

なぜ本を燃やすんですか?

「一番怖いのは、心を失うことじゃない。失った時に、誰もそれを教えてくれないこと。誰かを蹴落としたときに、それはダメだと教えてくれる友達がいないこと。つまりひとりぼっちだってこと」

ようこそ、新たな迷宮へ。

評価:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

今年読んだ小説の中でワースト1,2を争うレベルの作品。本当に最低で最悪な小説。こんな害悪本が店頭に並んでいることが許容できなくなるレベルで腹が立った。

本作は、読書好きの少女が、不朽の名作と呼ばれる文芸作品をこの世から消そうとする悪役に立ち向かっていく話である。大筋のストーリーはまぁよくある話で、特に語ることもない。どうしても許せないのは、現代で出版されている単純娯楽小説のことを、「売れれば良い中身のない内容の薄い本」と断定したことである。

その内容の薄い本とやらに僕はどれだけ救われてきたか。読書家とは、過去の名作を崇拝する異常な人物を指す言葉なのか。その理論でいくなら、この本自体も「売れれば良い中身のない内容の薄い本」に当てはまるだろうが。僕をこれまで支えてくれたエンタメ作品たちを馬鹿にされた気がして腸が煮えくり返った。

同著者の「神様のカルテ」は大好きな作品であるがゆえに、これが夏川先生の読書論だとは信じたくない。本作は、僕の中の夏川先生像を大きく揺るがす程の問題作であった。もう表紙すら見たくない。

 

以上。また来週。